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フロッケ・エンジニアリング: 物性を制御する新たな方法

講師
高三 和晃 氏 (京都大学 理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻)

日付
2017年6月22日(木)

時間
10:30-12:00

場所
本館2階 H284A 物理学系輪講室

添付ファイル
PDF   ダウンロード (236.0 KB)

内容
 近年、冷却原子系を中心に「フロッケ・エンジニアリング」と呼ばれる考え方が注目を集めている。フロッケ・エンジニアリングとは「外から周期的に系を駆動することで制御し、望みのハミルトニアンや量子状態を実現する」というアイデアである。
冷却原子系においては、光格子を時間的に振動させることで、人工ゲージ場やトポロジカル相を実現しており[1]、これまで冷却原子系ではアクセスできなかった物理を探索するための舞台を与えている。一方、物質系や人工量子系(メゾスコピック系)においては、理論的提案[2]は多数なされているものの、実験的に確認された例[3]は限られており、今後のさらなる発展が望まれる状況にある。
セミナーでは、冷却原子系・物質系・人工量子系での研究の現状について概観した上で「強相関電子系でのフロッケ・エンジニアリング」に関する自身の研究について紹介する。物質系におけるフロッケ・エンジニアリングの研究は、半導体などの電子相関が重要でない系を中心になされてきたため、電子相関に起因する現象への周期駆動の効果は、いまだ明らかでない部分が多い。セミナーでは、高強度レーザーによって駆動することで非平衡下で ① 銅酸化物薄膜にてトポロジカル超伝導を実現する[4]、 ② 重い電子系にて近藤効果を増強・抑制する[5]、という我々の2つの提案について、実験的な観測方法も含めてお話する。
[1] A. Eckardt, Rev. Mod. Phys. 89, 011004 (2017), [2] 例えば T. Oka and H. Aoki, Phys. Rev. B 79, 081406 (2009), [3] Y. H. Wang et al., Science 342, 453 (2013), [4] K. Takasan, A. Daido, N. Kawakami and Y. Yanase, Phys. Rev. B 95, 134508 (2017), [5] K. Takasan, M. Nakagawa, N. Kawakami, in preparation

連絡教員 物理学系 橋坂 昌幸(内線2809)


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