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エキシトニック絶縁体における光誘起ダイナミクスと秩序の増大

講師
田中 康寛 氏(東京工業大学 理学院 物理学系)

日付
2018年6月28日(木)

時間
10:30-

場所
本館2階 284A 物理学系輪講室

添付ファイル
PDF   ダウンロード (230.3 KB)

内容
 近年、強相関電子系物質を中心に、新しいタイプの光誘起現象が観測されている。それらは従来研究されてきた秩序の抑制や融解とは異なり、電荷の局在化(秩序の増大)[1,2]を示唆する現象であり注目を集めている。本研究では、エキシトニック絶縁体(EI)における光誘起現象について理論的に調べた。EIは、 1T-TiSe2やTa2NiSe5などで発現していると考えられている。特に後者では、光によるギャップの増大が観測され[3]、EI特有の非平衡現象の可能性が議論されている。これを踏まえ、 EIを記述する二軌道ハバードモデルを用いて、平均場近似の範囲で光誘起ダイナミクスを計算した[4]。このモデルでは、軌道間相互作用U'により基底状態のEI相がBCS-BECクロスオーバーを起こすことが知られている。計算の結果、基底状態がBEC的なEI状態ではエキシトニック秩序パラメータの絶対値、つまりギャップが光照射により増大することが分かった。一方、BCS的なEI状態ではギャップは減少する。この特徴的な相違が、波数空間での秩序パラメータの位相の振舞いから理解できることを議論する。

[1] T. Ishikawa et al., Nat. Commun. 5, 5528 (2014).
[2] Y. Kawakami et al., Phys. Rev. B 95, 201105(R) (2017).
[3] S. Mor et al., Phys. Rev. Lett. 119, 086401 (2017).
[4] Y. Tanaka, M. Daira, and K. Yonemitsu, Phys. Rev. B 97, 115105 (2018).

連絡教員 物理学系 古賀 昌久(内線2727)


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