前へ一覧に戻る次へ

1次元スピノルBose気体における緩和ダイナミクスと非熱的固定点

講師
藤本 和也 氏(名古屋大学)

日付
2019年5月30日(木)

時間
14:00-15:30

場所
本館2階 284B 物理学系輪講室

添付ファイル
PDF   ダウンロード (344.0 KB)

内容
 孤立量子系がどのように熱平衡状態へと緩和するかは統計力学の基礎付けに関連する重要問題であり、冷却原子気体は実験・理論の双方からこの問いを研究できる数少ない系である。近年、この熱平衡化問題において普遍的な緩和ダイナミクスを理解するために導入された非熱的固定点が注目を浴びている。これは動的スケーリングを伴う普遍的な緩和ダイナミクスを説明するためのアイデアであり、二次相転移が存在しない場合も含めた孤立系のスケール不変な緩和現象を包括的に理解できる可能性を持つと考えられている[1]。もともとはクォーク・グルーオンプラズマの文脈で初めて提案されたが、冷却原子気体の熱平衡化問題に応用されて、2018年には2件の実験観測が報告された[2,3]。本セミナーでは初めに非熱的固定点のレビューを行い、我々の最近の研究結果[4]を紹介する。我々は1次元スピノルBose気体のクエンチダイナミクスをtruncaetd Wginer近似に基づく数値計算で調べて、非熱的固定点に付随する普遍的な緩和ダイナミクスが現れること、およびそれが磁気ソリトンににより誘起されることを明らかにした。この結果はソリトンにより生じる非熱的固定点の初めての例である。さらに実験に対応した有限温度の結果を示し、実験観測の可能性について議論する。

参考文献
[1] J. Berges, arXiv:1503.02907 (2015).
[2] M. Prüfer, P. Kunkel, H. Strobel, S. Lannig, D. Linnemann, C.-M. Schmied, J. Berges, T. Gasenzer, M. K. Oberthaler, Nature 563, 217 (2018).
[3] S. Erne, R. Buecker, T. Gasenzer, J. Berges, J. Schmiedmayer, Nature 563, 225 (2018).
[4] K. Fujimoto, R. Hamazaki, and M. Ueda, Phys. Rev. Lett. 122, 173001 (2019).

連絡教員 物理学系 西田 祐介(内線3614)


一覧に戻る