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真性強磁性トポロジカル絶縁体を含む原子層サンドイッチ構造におけるスキルミオンの電気的観測

講師
高城 拓也 氏(東京大学 理学系研究科)

日付
2023年3月10日(金)

時間
11:00-

場所
本館地下 B61 物理学系輪講室

添付ファイル
PDF   ダウンロード (454.4 KB)

内容
トポロジカル絶縁体(TI)の持つ表面の spin helical/chiral 状態では、電子のスピン自由度がトポロジカルに保護され新奇な物性が期待できることから注目を集めている。特に強磁性が付与された強磁性トポロジカル絶縁体(FMTI)では、従来直接観測が困難であった表面状態の spin chirality の性質を、トポロジカルに非自明な磁気渦・スキルミオン(Sk)として実空間で観測可能であると提案されている。FMTI 作製方法はこれまでいくつか提案されているが、中でも磁性元素 Mnが規則的にシート状に配列した真性 FMTI の Mn(Bi1-xSbx)2Te4(MBST、図 1(a))は、高い結晶性と均一な磁気秩序を有しているため、2017 年にその原型となる MnBi2Se4 の報告以降[1]、世界規模で研究されるようになった。本研究では、非磁性 TI である(Bi1-xSbx)2Te3(BST)を 2 つの MBST 層で挟んだサンドイッチ構造において、Sk の有効磁場による散乱が引き起こすトポロジカルホール効果を、真性 FMTI で初めて観測した(図 1(b))[2]。特に、フェルミ準位依存性やスペーサーBST 膜厚依存性から、Sk が表面状態のspin chirality を反映していることが分かり、さらに Mn が規則的かつ密に配列することで、従来の 1/10 程度の弱い外部磁場で Sk が制御可能であると分かった。なお、本研究は東工大平原研究室、NIMS、およびロシア科学アカデミーとの共同研究である。

[1] T. Hirahara, et al., Nano Lett. 17, 3493-3500 (2017).
[2] T. Takashiro, et al., Nano Lett. 22, 881-887 (2022).


連絡教員 物理学系 平原 徹(内線2365)


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