前へ一覧に戻る次へ

【夏の談話会】熱平衡相図から外れた物性研究

講師
賀川史敬 氏(理学院物理学系 教授)

日付
2023年7月28日(金)

時間
16:30-17:30

場所
本館 M-123講義室

添付ファイル
PDF   ダウンロード (479.8 KB)

内容
量子物質は、温度・圧力・磁場などの外部パラメータに応じて、様々な電子状態を示します。強磁性、強誘電、モット絶縁体、金属、超伝導などはその代表例ですが、いずれも各外部パラメータ下において最も自由エネルギーが低い状態が実現するという、平衡熱力学の基本原則を逸脱するものではありません。しかし、我々の身の回りには、この基本原則に従っていない物質が多々見受けられます。ガラス、鉄鋼材料、ゴム、嗜好品のチョコレートなど、枚挙にいとまがありません。これらは全て平衡熱力学の枠組みを超えて生み出されたもので、現代社会において欠かせないものとなっています。一方で、量子物質の研究分野においては、平衡熱力学の基本原則を超えた状態を生み出し、制御し、活用するといった視点で行われている研究は、熱平衡の枠組みの中で行われているものと比べると非常に数が限られており、また、多くのことが分かっておりません。
本談話会では、強相関絶縁体、磁気スキルミオン、超伝導、非共線磁気構造における創発電磁現象などにおいて、非熱平衡状態の物性がみせる多彩な振る舞いについて最近の研究成果を交えて紹介したいと思います。


一覧に戻る