前へ一覧に戻る次へ

非エルミート量子可積分系におけるベーテ仮説の数理

講師
石黒 裕樹 氏(東京大学 大学院工学系研究科)

日付
2024年1月15日(月)

時間
14:00-

場所
本館2階 227C 物理学系輪講室

添付ファイル
PDF   ダウンロード (351.1 KB)

内容
 ベーテ仮説で厳密に解ける量子可積分系は,相互作用する多体系の物理を探索する為の良い研究場となる.非エルミート系においても量子可積分系の例は知られている.しかし,可積分性を示す事と物理量を解析する事の間にはギャップがあり,非エルミート量子可積分系の解析はエルミート系の場合と比べて進展していない.量子可積分系の解析を実行する為には,ベーテ方程式の解構造を特定する必要がある.これは一般に難しい問題であるが,可積分系に特有の準粒子的構造を捉える事で解ける場合がある.例えば,Heisenberg模型では,ストリングとよばれる準粒子的構造を利用した解法(ストリング仮説)が知られている.
 本講演では,可積分系に発現する準粒子について紹介し,それが非エルミート性によってどの様に変化するのかについて議論する.講演の前半では,ベーテ仮説について概説し,その有用性を量子ソリトンの研究[1]の例を通して紹介する.その後,ソリトン・ストリングといった準粒子が可積分系に広く現れる事を紹介し,非エルミート量子可積分系におけるストリングについて議論する[2].

[1] Yuki Ishiguro, Jun Sato, Takahiro Ezaki, and Katsuhiro Nishinari, “Constructing quantum dark solitons with stable scattering properties”, Phys. Rev. Research 4, L032047 (2022)
[2] Yuki Ishiguro, Jun Sato, and Katsuhiro Nishinari, “Asymmetry-induced delocalization transition in the integrable non-Hermitian spin chain”, Phys. Rev. Research 5, 033102 (2023)


連絡教員:物理学系 西田 祐介(内線3614)


一覧に戻る