物質の基底状態を記述する理論として誕生した密度汎関数法は、現在、物質の励起状態を記述する手法としても注目を集め、進化を続けています。当研究室では、時間依存密度汎関数法の研究展開を進めています。また、密度汎関数法による物質研究として、共有結合元素からなる固体系・クラスター系の研究を展開しています。ダイヤモンドは最も硬い物質として知られています。他方、鉛筆の芯として用いられることから分かるように、グラファイトは、非常に柔らかい物質です。この両者は同じ炭素原子のみからなる同素体です。両者の違いは、原子間の結合ネットワークトポロジーにあります。近年、サッカーボール型のC60に代表される籠状炭素クラスターであるフラーレン、さらには、1次元物質であるカーボンナノチューブが、新たな炭素同素体として発見されました。そして、それらが多様な物性を示すことが理論的に予言され、実験研究を刺激して研究が展開されてきました。現在では、21世紀を支えるナノサイエンス・ナノテクノロジーの最重要物質として位置付けられています。ニュートンは、長い期間、錬金術研究に没頭しましたが、ネットワークトポロジーを利用した現代の錬金術と位置付けられるのが、これら、炭素をはじめとする共有元素ネットワーク物質系の研究です。その物性解明と新物性予言、そして、それらを構築単位とした新物質の設計を進めています。 |